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「慢性胃炎とは何者?
慢性胃炎から胃癌までの流れ」

 内視鏡検査(胃カメラ)やバリウムの検査にて「慢性胃炎(まんせいいえん)」や「萎縮性胃炎(いしゅくせいいえん)」と言われた方は多いと思います。しかし、これがどういう状態なのか、患者さんがお読みになるためにわかりやすく説明されたものは有りません。胃の病気について正しい知識を持ち、予防・早期発見に努めたいものです。そして、お知り合いに胃・十二指腸の病気を持った方がいらっしゃったら、ご理解されたことを教えてあげて下さい。そうしてこの県南地区から、進行胃癌で苦しまれる方を一人でも減らしていただきたいと切に望みます。

 「慢性胃炎」とは、胃の粘膜に白血球が集まって、常にじわじわとした慢性的な炎症を起こしている状態を言います。

 こういった炎症が長い間続くと、胃の粘膜の、胃酸を出す胃腺というものがどんどん萎縮し、縮小して、胃の粘膜がうすくペラペラになってしまいます。すなわち、慢性胃炎が長く続いた結果、胃の粘膜が萎縮した状態を「萎縮性胃炎」という訳です。

 内視鏡で観察すると、正常の胃というのは、きれいなピンク〜柿色をしています。しかし、慢性胃炎が長く続き、萎縮性胃炎になってくると、胃は色あせ(退色)し、褐色調になり、粘膜の血管が透けて見えるようになってきます。

 最近までの研究で、この「慢性胃炎」や「萎縮性胃炎」の原因のほとんどが、ヘリコバクター・ピロリ菌(Helicobacter pylori以下ピロリ菌)という細菌によって引き起こされていることが分かりました。

 実際に、抗生物質を一週間飲んでこのピロリ菌を除菌すると、白血球浸潤が取れ、胃炎がすっかり消えてしまいます。

 五十歳以上の日本人は、大多数がこのピロリ菌に感染していますが、感染時期は、五歳未満の幼少期と言われています。幼少期にピロリ菌に感染した胃は、常にじわじわとした炎症があるために、次第に痛んでゆき、三十歳位から萎縮性胃炎に進行します。このせいで、生まれた時はきれいな柿色だった胃も、次第に粘膜が薄くなって、色あせて褐色調になるという訳です。そして、萎縮の進行度に応じて胃癌発生が高くなることがわかっているのです

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