大切な命を奪われないために

「食中毒ゼロ地域」を目指しましょう

 今回は衛生の話です。高温多湿となるこの時期避けて通れないのが食中毒。大切な命を奪われないために、十分な注意が

必要です。

 2002年8月、栃木県宇都宮でO-157 腸管出血性大腸菌による集団食中毒事件が発生し、国内最悪の死亡者9名の犠牲者を

出しました。

 この頃私は、医学博士号(自治医大)を取得後、宇都宮社会保険病院内科医長を勤めており、O-157事件患者の搬送を多く引き

受け、対策チームを作って懸命に治療しました。

この事件は、医療機関(病院と介護老人保健施設)の「給食」が原因で発症したという特異な事件で、搬送された患者様は平均年齢

が80歳の高齢者で、全員が脳血管障害や心臓病などの合併症を持っていました。

 こうした要因が要因が国内最悪の死亡者数につながったと言えます。全員が血便で発症し、このうち2名が溶血性尿毒症症候群

(HUS)という重症な合併症に陥りました。事件後、治療に関わった大学病院含む県内7施設の医師が宇都宮市保健所に集まり、

事件に係わる意見交換会を開き、今後の対策や治療法などについて討論会を行い、私が日本消化器病学会にて事件報告を行い、

今後の発生に備えました。

 感染性腸炎は大きく2種類に分類されます。一つは、ウイルス性腸炎、もう一つは細菌性腸炎で、ほとんどの食中毒は細菌性腸炎で

す。この冬に大流行して有名になったウイルス性腸炎はノロウイルスでした。ウイルスは抗生物質が効きませんので、下痢・嘔吐がひどい

ときには、点滴を行い、脱水にならないようにして回復を待ちます。細菌性腸炎の代表格は病原性大腸菌O-157(牛・豚・鶏などの

食肉)、サルモネラ菌(牛・豚・鶏などの食肉、卵)腸炎ビブリオ菌(魚介類)、黄色ブドウ球菌(手に着いた菌が調理の時に食品に付

着し、毒素を作り、それを食べることによって中毒が起こります。おにぎり・お寿司・サンドウィッチなどの、直接手を触れて作る料理

に注意。ブドウ球菌の作る毒素は熱に強く、すでに毒素が含まれている食品を加熱しても中毒は防止できません。食べてから数時間

で症状が出ます。)キャンピロバクター(食品や飲料水、牛乳)です。

 

   以下の食中毒予防作戦を実行し、「食中毒ゼロ地域」を目指しましょう。

 

@ 肉類は完全に火を通す。 この時期 レアは危険

A おにぎりはラップで握る。 調理前によく手を洗う。黄色ブドウ球菌は、ニキビや傷に触った手などに付いていることが多い。

B夏場は卵を半熟にしない。サルモネラ菌が多く付着しているのが、鶏卵。卵は良く洗い、殻の外に付いている菌を落とすことも

                   必要。

C一回一回まな板、包丁、ふきんを充分に洗う。この時期、汚染度の高い肉、魚類を調理する時には特に注意。

D魚介類は真水でよく洗う。 腸炎ビブリオは主に魚の皮の表面に付いている。丹念に洗ってから、調理、冷蔵する。

E冷蔵庫を過信しない。

Fひどい下痢・血便が出たら、早めに医療機関に受診する。

 

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