患者数は、人口の10〜20%に上り、最近増加している現代病と言えます。

「過敏性腸症候群」とは、下痢・便秘・腹痛・腹鳴・ガスの貯留感等、お腹の不快感が続く病気です。精神的なストレスが誘因となり胃腸の運動に変調をきたすもので、最近増加している現代病といえます。患者数は人口の10〜20%に上り、欠勤や不登校の原因にもなり、患者様の生活の質を著しく障害します。機能障害が原因の病気であるため、エックス線検査や内視鏡検査などの画像検査をしても、はっきりとした異常は見つかりません。「何でもない」と言われながら、辛い症状に苦しまれている方も大変多いのではないかと心が痛みます。これは「過敏性腸症候群」という、れっきとした病気なのだ、ということがわかるだけで、多くの患者様は安心し救われるような思いがするものです。また、便秘に下剤、下剤に整腸剤、腹痛に沈痙剤という単純な処方ではなかなか治りにくい特徴があります。

 実は、当疾患には非常に良く効く薬が開発され、脚光を浴びています。当薬は、胃の中で食物と混ざり合い、腸の中で水分を吸収してゼリー状にふくらみ、便秘には、便の量を増やすとともに便をやわらかくして、丁度良い硬さの便が出るようにします。

また、下痢では、水様〜泥状の便を形のある丁度良い硬さの便にして、排便回数を減らします。ただ、当薬剤を飲み始める前に、大腸内視鏡検査を行ったほうがよいでしょう。大腸ガンや潰瘍が、過敏性症候群とよく似た症状を出すことがあるからです。

 我々は、「軸保持短縮法」というテクニックを用いて大腸内視鏡を行います。従来の内視鏡挿入法は、空気を入れながら、たわみを作り押し入れていく、「押し」が主体の挿入法でした。これが「大腸内視鏡検査は苦しい検査」という固定観念を作ってしまいました。

我々が行っている方法は、空気をあまり入れず、たわみも作らないように、腸のひだを内視鏡の先でひっかけて、腸を引き戻し、短縮・直線化して挿入してゆく、より苦痛の少ない方法です(直線的挿入法)。

 便秘や下痢で非常にお困りの患者様の多くが、私の外来に初めて来られるとき、大腸がんを心配し暗い顔をして来院されます。

しかし、大腸内視鏡検査を終え、ガンや潰瘍が無いことを確認し、前述の薬を飲んでいただくと、多くの患者様は、不安が取れ、明るい安堵の表情に変わります。中には、「十数年の痛みから解放された」、「生き返ったかのよう」との声も頂いています。

 ガンのように悪性の病気ではないものの、著しく患者様の生活の質を障害する疾患についての認識を、我々医療者側も高める努力が必要だと信じています。

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